『遊天荘』の復興・維持を行いながら、武道や空手道を通じた江上茂の教えを後世に伝えます

君影草 完全版 第2章 第5話 『戦災にあって』

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泥だらけというより油光りのする顔を見合って、やられた、とお互に感じた時、私は私達が無一物になった事を知った。近所の義江さんが玄米を焚いて食べさせてくれた。

夜が白々と明けた頃、私たちは焼跡に立って呆然自失していた。五〇〇坪の土地に五軒の家が見事に焼け落らて、プスプスといぶっていた。お風呂場の水が出たままになっている主人が飾って置いた刀は、見事に焼けて驚くなかれ、八畳の部屋に大型焼夷弾が落ちていた。若しあの時、尚志を振り切って主人が中に飛び込んでいたら、どうなったろう。本当に幸運だった。コンロや鍋を思い出して、刀を一番先に思い出さなかった主人の方が私は好きだ。

刀は又買えるかも知れない。ニ人の子供を父無し子にしないで済んだ。

畑の茄子が色が変ってぶら下っている。甘藷のつるがちりちりに焼けている。小屋の中の配給用の馬鈴薯がいぶしくさく、噛ってみれば食べられない事もない。米も真黒く焼けているが中心部は狐色にこんがりとくさい、でも食べられない事もなさそうだ。主人は二百米位離れた所の父の借家に一寸寄せてもらう事を頼んでくれ、防空壕の中でかろうじて助かった掛蒲団一枚と、毛布、コンロや鍋、焼け残りの使えそうな食器をリヤカーに乗せ、私達三人をそれに乗せてその家に行って見た。畳も何もない、汚れた家だった。焼け出されなかったと云うのも、住める家ではない。それに家の前を市電が走っていて、尚志かチョコチョコ出て行くので私の神経がすっかり参ってしまった。

あなた、焼跡にバラックを作りましょうよ、と云えば主人も同じ思い、食糧はこげくさいが少しはあるし、焼けぼっくいか沢山あるので不自由はしない。又リヤカーに全財産を乗せると焼跡に帰って来た。焼けトタンや焼けぼっくいで、掘立小屋を作る二三日の間は防空壕に寝たが、すごい暑さと臭気に一睡も出来なかった。外に上って、満天の星を眺めて寝た。困ったのは仁士のおむつで、泣きたい位困った。その年は本当に暑かった。

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