『遊天荘』の復興・維持を行いながら、武道や空手道を通じた江上茂の教えを後世に伝えます

君影草 完全版 第2章 第10話 『館山時代』

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上須加で主人と

六月一日、館山へ移った。関東ローム層の白い道の両側には、緑の葉が白い灰をかぶった様に、砂ほこりのひどい山坂を越さねばならない。昔鉄道をひく時、漁民が反対して館山から山を越す道路を、今は海岸を通る道路がかく便利であると考えなかった。荷物も少ない前輪のトラック、随分と遠い気がした。其処は海辺に近い汐入川という川を越して路地に入るとすぐであった。

前田、と表札の掛かった何かわけのありそうな薄暗い土間は広い。もう八十は、はるか越えたであろうお婆さんと孫が中の男の子をまじえて、三人、長女は十五、六であろうか。

部屋は十畳で廻り縁、台所は共用。風呂も入れてくれる由、すべて房日の鈴木さんの世話であった。鈴木さんは若いけれど中々苦労人で、新婚早々の頭のよさそうな奥さんと、館山の北條海岸の寮に住んでいられた。あれから三十年あまり、お世話になっている私共には大切な人だけれど、其の頃は髪も黒々フサフサとして、ハンサムであった。

やはり前田さんには、大きな秘密があった。主人は魚屋で、酒飲みで、年末の忙しさと、気のたっていたせいか、はた又痴情のからんだ事件だったのだろうか。奥さんから酒をたしなめられたのが、力っとなって、出刃包丁で奥さんを殺してしまったのだそうだ。青ざめて自首した由、刑は以外に軽く、もう五年も立てば、宇都宮刑務所を出られるのだよ、とおばあさんはけなげに、孫の面倒見ている。ヒロ子という長女は、中学生、多感な娘で、父の様に主人を恋しがる。女は、留守中、よく家の中を覗きに来る。

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