『遊天荘』の復興・維持を行いながら、武道や空手道を通じた江上茂の教えを後世に伝えます

君影草 完全版 第4章 第8話 『刷り上がった「空手道専門家に贈る」』

このページのコンテンツを全てお読みいただくには、協力会員への登録が必要です

唖然として私は主人の顔を見た。

かつてこういう事は一度も無かった。私は日頃、主人の書いた筋書きに従っただけで、自分自身で企画して実行に移す事は無かったから、お前の思い通りにしろ、と言われても、戸惑うばかりで突磋にはどうしていいか分からなかった。

もともと私はそんな事が大好きで、何時も夢見ていたし、出来ない旅を長い間、地図の上に目を走らせて楽しんだ。地理や歴史は大好きで、そんな本もよく讀んだし、汽車の時刻表は私にとって限りなく楽しい友達であった。

日本全国に敷きつめられた鉄道の、レールの上を旅する夢は儚くとも楽しかった。主人は合宿やその他で随分旅する機会が多かったが、その間私は、空手ウィドーで、今主人は何処あたりを旅しているかと、地図の上に思いを走らせた。帰って来た主人に聞いても一向覚えてはいない。その町にはこんな名所や名園がありますよ、と云っても、フーウン そうかネ と、風景や名所や風習など全く興味は示さなかった。ただ、今度の合宿はこうだった、とか、こんな事かあった、と空手の事はボツボツ話てくれた。何しろ発車前に二本の鑵ビールを用意して、それを飲み終れば、いい気持ちで揺れに身を委ねて眠ってしまう人なのだ。

主人がスケジュールをたてて見ろ、と言ってくれたので、私はそれからの日々がとても楽しかった。

苦心惨憺して時刻表と首っ引きで案をたてていると、「出来たか」と、メモ帳を覗き込んで冷やかした。

「グリーン車にしろよ」
主人は折角の旅行だから、俺が面倒を見るから安心しろよ、と気遣ってくれた。

あらかた、鶴岡・福井・大阪のスケジュールが立ち、交通公社に頼みに行こうと思った時、林さんから鶴岡ゆきの切符が送って来た。

「いなほ」という列車だった。その旨電話でお礼を言いながら、帰りの列車は万博廻りにするから、と云うと、その様に手配します、と言う。申訳ないから断ったが、是非そうさせて下さいとの事で、主人の大阪から大分に出発する飛行機の時間を告げた。

先を越されてしまって、しまった、と思っても、有難い事なので、オヤオヤ又私の企画は実現出来なかったわね、とつぶやいた。

このコンテンツを閲覧するにはログインが必要です。お願い . あなたは会員ですか ? 会員について

江上茂資料館

当会へのご連絡はこちらから

会員ログイン

江上茂資料館

  • facebook
PAGETOP
Copyright © Egami Karatedo Doyukai All Rights Reserved.
Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.
pocket line hatebu image gallery audio video category tag chat quote googleplus facebook instagram twitter rss search envelope heart star user close search-plus home clock update edit share-square chevron-left chevron-right leaf exclamation-triangle calendar comment thumb-tack link navicon aside angle-double-up angle-double-down angle-up angle-down star-half status