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主人は、友人がそれ程多い人ではなかった。子供の頃、かなりはげしい気性だった様だから、なかなか友人が出来なかったのかも知れないが、小学校や中学校の友人の名前は、二、三聞いたのだが、其の後交際している様子はなかった。
何しろ、野球チームが出来る男の兄弟が九人居て、仲がよかったから遊ぶのには事欠かなかったのであろう。
大学に入って、空手部の先輩、後輩の名はよく聞かされた。ゼミの仲間の二人、後年は中学の二人とは遠く離れてはいたが、会えば仲がよかった様子が偲ばれて、終生交際を続けた。
が、やはりあまり交際上手な人ではなかった様に思う。
ゼミの友人の、須藤さん、谷さんの二人は、はた目にみても羨ましいような友情を持ち続けたし、中学時代の二人の友人とも、それはよい交際を続けた。
その四人とも、すでに鬼籍にはいったけれど、私は何時かその事をゆっくり書いて見たいと思う。
他に、主人がとても尊敬する人があって、私もその人に会わされて、流石に主人が尊敬する様な立派な人だと思ったけれど、窮局には思いもかけず裏切られた。その口惜しさは、女の私にも、ひどくこたえた。男の友情にもこんな思わぬ醜い面があるのか、と疑った。主人はその人の理想に命がけでついて行った一人だった。