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スイスの旅を終えた我々一行は、一度パリに戻った。
此処で二、三日休養をとり、村上さん一門の演武会に出席する事になっていた。
村上さんは、渡欧以後、言うに言われない苦労をされた様だが、人柄ゆえか追い追い門弟も増え、フランス、イタリア、ポルトガルに大きな支部を持っていた。折りにふれて、話を聞く度に異国での苦労はさぞ、と思う。それだけ苦労人であるから、我々を招待するに当たって、水も洩らさぬと言える心づかいをしてくれた。
胸の熱くなるような思いであった。主人も、人を招くのは、この様にしなければいけないね、と感心した。村上さんにしても、大島さんにしても、その点は本当に紳士であった。
リーダーが立派だと、必ずよい門人が居る。言葉は通じなくても以心伝心でみんな通じる。
大島さんと、村上さんが若い頃、このパリで、プレイと云う男の許で働いていた時の苦労は前に書いたが、今はこうして村上さんはパリで、大島さんはロスアンゼルスで多くの門人を集めている。永年の苦労が実った事と、本当に喜ばしい。
パリ滞在中の演武会で、私はずっと以前、アメリカから大島さんが日本に連れてきた少年で、「チエムラ」という若者が居るのに驚いた。彼はなかなか美少年だったし、何だか日本人の様な名前なので覚えていた。